人とあう 「合う」「会う」「逢う」「遭う」「遇う」のどれが正しい?

「あう」という漢字はいくつもあるのでどれを使ったらいいのか迷いやすい言葉です。論文・小論文で、どの場合にどの漢字を使ったらいいのか悩むこともあるかと思いますが、それぞれの使い方を踏まえて、使い分けられるようにしましょう。ここでは、「合う」「会う」「逢う」「遭う」のそれぞれの意味の違いや例文について解説していきます。

「合う」「会う」「逢う」「遭う」「遇う」の違い

合う(あう)
意味:いくつかの別々のものがくっついて一緒になる様子、その結果調和がとれていて、違和感がない様子を表します。
「合う」は重なるという意味だけでなく、その結果基準に照らして同じである、フィットしているという意味を持ちます。そこで、「答えが合う」など基準と同じであることや、「似合う」や「体に合う」などフィットするというときに使います。また、調和がとれているという意味では、「給料に見合う」など、二つの物事に均衡がとれているというニュアンスにも使われます。そこで、「合う」は合流、合致、適合など、くっついてひとつになり、それがぴったりと当てはまるかどうかを基準にとらえるといいでしょう。
会う(あう)
意味:実際にある場所で、顔と顔を合わせて対面することを表します。
「会う」は「別れる」の反対語で、実際に対面することを表します。そのため、実際に人と人が出会って、お互いの顔を見ていることが前提になります。そこで、面会や会談など、人と人が顔を合わせているのかどうかを基準にとらえるといいでしょう。ただし、「落ち合う」「待ち合わせる」など複合動詞で使う場合は、人と人が実際に対面することでも「合う」を使います。
逢う(あう)
意味:顔と顔を合わせて対面することを表しますが、1対1で会うときに使います。その中でも強く会いたいと願っている相手に会うことを表します。
「会う」と同じように実際にある場所で、顔と顔を合わせて対面することを表すのですが、「逢う」はさらに範囲が狭く、自分にとって特別な相手と対面するときに使います。例えば恋人や運命の相手、生き別れた兄弟など、会いたいと強く願っている人に会うときに使います。そこで、逢うは逢瀬など、特別な意味を持つ対面と考えるといいでしょう。また、偶然会うというニュアンスもあります。「逢う」は常用漢字ではないので、特に区別なく、「会う」に置き換えられることもあります。
遭う(あう)
意味:本人にとって偶然悪い物事(時に人)にぶつかることを意味します。
「会う」「逢う」はおもに人に使われます。「遭う」は人に使われることもありますが、おもに物事に使われます。悪い物事に偶然ぶつかったときに使う漢字なので、迷惑を被る、できればない方がいいというニュアンスがあります。「雨に遭う」などは、雨が降っていることがうれしいときには使えません。
遇う(あう)
意味:本人にとって偶然良い物事(時に人)に出会うことを意味します。
「会う」「逢う」はおもに人に使われます。「遇う」は人に使われることもありますが、おもに物事に使われます。「遭う」は悪い物事にぶつかるときに使いますが、「遇う」は良い物事に出会ったときに使います。本人にとってできれば積極的に出会いことに使います。また、「遭う」は常用漢字ですが、「遇う」は常用漢字ではありません。そのため、「遇う」は「会う」に置き換えられることもあります。

人とあうは「会う」が正しい

「人とあう」の「あう」は人と実際にある場所で対面するので「人と会う」が正解です。この時の人は特別な人ではないため、「逢う」は使いません。マスク会食という言葉もはやりましたよね。会食とは、人が集まって食事や会話を通じて親睦を深めたり、関係を築いたりすることなので、会食は、人と人が実際に会うことを意味する「会」を使うのですね。

「合う」の例文

例文1 2つの道が合うところで待ち合わせよう。

2つのものが1つにぴったり合う、合流するということです。人と人が会うから、「会う」と考えてしまうかもしれませんが、あうのは「道」で「人」ではないので、ここでは「合う」が正解です。

例文2 答え合わせをしたら、この解答で合っていた。

答えという基準に照らし合わせて、適合するかどうかを検討するので答え合わせは「合わせ」になります。照合や合格などもある基準に照らし合わせてそれにフィットするのかどうかを見ていますよね。同じように、「この服はあなたに似合う」などの「似合う」も、当該者を基準に服がフィットしているところから「合う」を使います。「2人はまったく息が合わない」なども、互いに照らし合わせてぴったり適合しない、片方にずれがあるというところから、「合う」を使います。

例文3 割に合わない商売はやらない方がましだ。

「割に合わない」とは、比べる2つのものがぴったり適合しない、見合わないという意味です。この場合、割に合わないのは、商売とそれに見合う金額、もしくは、それに見合う労力などが考えられます。例えば、商品を100円で仕入れているのに、100円で売れなければ、商売にならない、調和がとれていないということになります。

「会う」の例文

例文1 取引先の課長と会議室で会う約束をしている。

実際に人とある場所に出向いて対面するので、ここでは「会う」を使います。顔を見て話しをするときは「会う」ですね。

例文2 駅前の喫茶店で友達に会った。

実際に人とある場所に出向いて対面するという点で、こちらも「会う」を使います。こちらも顔を見て話しをするので「会う」ですね。

「逢う」の例文

例文1 久しぶりに彼に逢うのを私は楽しみにしていた。

「逢う」は特別な人と会うときに使うため、この時の「彼」は恋人や配偶者などを暗示していると考えられます。逢瀬というところからも、男女の関係を指す場合が多く、「私」は女性ではないかと考えられます。

例文2 今年こそは運命の出逢いがありますように。

この「出逢い」も「出会い」ではなく、「出逢い」を使っているところから、運命の出逢いは将来の配偶者、恋人との出逢いを暗示しています。「逢」は偶然という意味もあるため、運命の人に偶然引き合わせてもらえるようにというニュアンスがあります。

例文3 ここで逢ったが百年目!

特別な関係は、恋人同士だけではなく敵や仇にも使います。敵との出逢いもまた何か縁があることというところから逢うを使っているんですね。ちなみに、百年目というのは寿命の限界を表しています。だから、「ここで逢ったが百年目」というのは、ここで運命的に出逢ったからにはこの日に寿命は限界がくる(必ず殺す)という意味になります。

「遭う」の例文

例文1 自転車に乗っていたら、交通事故に遭った。

交通事故はよくない物事なので、「遭う」と使います。また、「夕立に遭う」「盗難に遭う」など、偶然悪いことに出くわしたときには、「遭う」を使います。

例文2 東京の大学に進学したいと言ったら両親の反対に遭った。

反対されるのは自分の意に反しているところから、自分にとってよくない物事なので「遭う」を使います。また、「ひどい目に遭う」も「遭う」を使います。

「遇う」の例文

例文1 こんな幸運に遇うなんてなかなかないことです。

偶然幸運に巡り合えたということで「遇う」を使います。幸運は本人にとって良い事なので、「遭う」ではなく「遇う」になります。

例文2 昨日ばったり恋人と遇った。

恋人に偶然出会えた、そのことは本人にとってよかった、うれしかったというニュアンスを表すので「遇う」を使います。

例文3 時に遇って社業が発展しました。

「時に遇って」とは会社が栄えるのにちょうどよい時期に合うという意味になります。そのため、「遇う」を使います。

論文・小論文を書くにあたって「合う」「会う」「逢う」「遭う」「遇う」を使い分けるポイント

論文・小論文は、常用漢字を使って書くのが一般的なため、「逢う」「遇う」は「会う」を使って書くようにしましょう。ただ、小論文の中には、課題文のついているものもあり、その中には、「逢う」や「遇う」という漢字が使われていることも。「彼に会った」「彼に逢った」「彼に遭った」「彼に遇った」では話者の心情が違ってくるのでその点は注意して読み解きましょう。「会う」は人と対面して会うとき、「遭う」は本人にとって悪い出来事に遭うとき、物事が1つになるとき、適合するときは「合う」と覚えておくといいでしょう。

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