「あてる」という漢字はいくつもあるため、どの場合にどの漢字を使ったら適切なのかあやふやに覚えている人もいるかと思います。論文・小論文では、漢字を適切に使えるよう適切な用語の使い方をきっちりと理解しておきましょう。ここでは、「当てる」「宛てる」「充てる」のそれぞれの意味の違いや例文について解説していきます。
「当てる」「宛てる」「充てる」の違い
当てる(あてる)
意味:命中や照射させること。
「当てる」はたくさんの意味があり、「ボールを人に当てる」「光を当てる」などのように「あるものを他のものに触れさせたり照射したりさせること」、当選、当確などのように「狙い通りにする」、配当、担当など「ほかのものに振り分ける」などの意味合いがあります。「当てる」の使用範囲は広いですが、「充てる」「宛てる」は限定的に使われます。
宛てる(あてる)
意味:名指しすること。
「宛てる」は「宛先」というように、手紙や荷物の届け先を名指しするという意味合いでよく使われます。
充てる(あてる)
意味:割り当てること。
「充てる」は「貯金は渡米資金に充てる」など人員や金品など、ある目的や用途に振り向ける、充当するという意味です。全体の一部をそのために使う、相手に向けるというニュアンスがあります。振り分けるという意味では「当てる」と「充てる」は同じ漢字が使われるため、どちらを使ってもかまいませんが、「充てる」には割り当てるという意味しかないため、「充てる」を使うのが一般的です。
返済にあてるは「当てる」「充てる」が正しい
「返済にあてる」は返済にお金を振り分けるということなので「当てる」もしくは「充てる」を使うのが正解です。「当てる」も「宛てる」も両方振り分けるという意味があるため、どちらも使えます。
「当てる」の例文
例文1:濡れた服は日光に当てて乾かしておきましょう。
「日光にあてる」は日光を濡れた服に照射させるところから、ここでは「当てる」を使います。
例文2:見事彼は予想を当てて、競馬で1万円以上も儲けた。
「予想をあてる」は、予想を狙い通りするということなので、ここでは「当てる」を使います。
「宛てる」の例文
例文1:部屋の中を整理していると、以前母に宛てた手紙が出てきた。
「母にあてた」は、母を名指しして書いたということなので、ここでは「宛てる」を使います。
例文2:私に宛てられた荷物はまだ届いていないようだった。
「私にあてられた」は私を名指しして送ってきたということなので、ここでは「宛てる」を使います。
「充てる」の例文
例文1:大学入学に充てるためのお金はすでに用意してあるので、あとは試験に合格するのみだ。
「大学入学にあてる」は、大学入学のためにお金を振り分けるということなので、ここでは「充てる」を使います。
例文2:人員不足の部署には新しく入った社員を充てることになっている。
「社員をあてる」は、人員不足なので新入社員を割り当てるということなので、ここでは「充てる」を使います。
論文・小論文で「当てる」「宛てる」「充てる」を使いわける視点
「宛てる」は名指しということ、「充てる」は振り分けるということを意味します。「当てる」は広く、あるものを他のものに触れさせる、命中や照射する、振り分けるという3つの意味を持ちます。「当てる」には「充てる」と同じ振り分けるという意味があるため、論文・小論文では、迷ったら広く使える「当てる」を使うようにしましょう。