「しずめる」という漢字は「沈める」「鎮める」「静める」がありますが、それぞれどの場面にどの漢字を使うのかということは決まっています。論文・小論文を書くときには、適切に区別して使えるようにしていきましょう。ここでは「沈める」「鎮める」「静める」のそれぞれの意味の違いや例文について解説していきます。
「沈める」「鎮める」「静める」の違い
沈める(しずめる)
意味:沈むようにする。
「沈める」は物を水から浮かび上がらないようにすることを言いますが、その他にも、姿勢を低くすることや格闘技などで相手をノックアウトすることにも使います。
鎮める(しずめる)
意味:物事の勢いを抑える・乱れを抑える。
「鎮める」は「鎮圧」のように良くない状態にあるものを、何らかの力を用いて良い方向へ整える時に使います。そのほかにも「鎮魂」など、宗教的・霊的なものを落ち着かせるという意味でも使います。「静める」と使い方が似ているところもありますが、「鎮める」で対象になるものは乱れや痛み、神などです。
静める(しずめる)
意味:音や声を出さないようにする・落ち着かせる。
「鎮める」と使い方が似ているところもありますが、「静める」で対象になるのは物音や気持ちなどです。必ずしも良くない状態にあるものを良い方向に整えるという意味があるわけではありません。
デモをしずめるは鎮めるが正しい
「デモをしずめる」はデモという良くない状態にあるものを、何らかの力を用いて良い方向へ整えることなので、ここでは「鎮める」が正解です。
「沈める」の例文
例文1:浮力で上がってこないように、箱に石を詰め込んで水の中に沈めた。
「水の中にしずめた」は水から浮かび上がらないようにすることなので、ここでは「沈める」を使います。
例文2:塀のうしろで身を沈めて、相手の行動をうかがった。
「身をしずめる」は姿勢を低くすることなので、ここでは「沈める」を使います。
「鎮める」の例文
例文1:頭痛を鎮めるため、鎮痛剤を飲んでばかりいる。
「頭痛をしずめる」は頭痛を鎮痛剤の力を用いて良い方向へ整えることなので、ここでは「鎮める」を使います。
例文2:御霊を鎮めるため、祈祷師をお願いした。
「御霊をしずめる」は宗教的・霊的なものを落ち着かせるという意味なので、ここでは「鎮める」を使います。
「静める」の例文
例文1:気持ちを静めるために、人の字を3つ手のひらに書いた。
「気持ちをしずめる」は気持ち落ち着かせることなので、ここでは「静める」を使います。
例文2:教室の喧騒を静めるため、先生は机を強く叩いた。
「喧噪をしずめる」は物音や声を出さないようにすることなので、ここでは「静める」を使います。
論文・小論文で「沈める」「鎮める」「静める」を使い分ける視点
「しずめる」という漢字ですが、「沈める」は水没させること、「鎮める」は混乱・痛み・宗教的なものを落ち着かせること、「静める」は物音や気持ちを落ち着かせることと覚えておきましょう。論文・小論文ではそれぞれの漢字をきちんと正しく使えるようにしておきましょう。