気にいる 「入る」「要る」「居る」「射る」のどれが正しい?

「いる」という漢字はたくさんあり、論文・小論文を書く際には迷いやすい言葉でもあります。しかし、それぞれ比較的わかりやすい違いがあります。それを理解して誤用しないように気をつけましょう。ここでは「入る」「要る」「居る」「射る」のそれぞれの意味の違いや例文について解説していきます。

「入る」「要る」「居る」「射る」の違い

入る(いる)
意味:人や物がある場所や範囲、状態の中へ移る、中にはいること。
「入る」は移動することですが、転じて「入る」は「はいる」とも読み、現代文の「はいる」は口語、「いる」は文語となります。現代の口語では「はいる」と読むのが一般的です。一方、「いる」は一般的に古語で用いますが、「郷に入っては郷に従え」「気に入る」「堂に入る」「悦に入る」「入り用」などのことわざや慣用的表現、「寝入る」「恐れ入る」など接尾語的に使うときは、現代の口語でも「いる」と読みます。接尾語的に使うときは、その動作や状態の程度が非常に深いことを意味し、その状態に徹したり、なってしまったりするニュアンスになります。
要る(いる)
意味:必要であること。
「要る」の対義語は「要らない」となります。必要という意味以外にも欲しいというニュアンスもあります。
居る(いる)
意味:その場にじっと存在すること。
「居住」「居所」など人が現実にいる場所が特定できるニュアンスがあります。ですが、「昔ここに山田さんという人がいた」など特に場所を指定しているわけでないときはひらがなで「いた」と書くのが一般的です。「居る」の対義語は「居ない」となります。
射る(いる)
意味:矢を弓で放つこと、的にあてること。転じて要点を的確に捉えているという意味で使われる慣用句です。
実際に矢を弓で放つことやその矢が的にあたったことを意味しますが、矢でなくても目標に到達するニュアンスがあります。「的を射た批評」などうまく要点を「つかむ」という意味にもなります。要領を得ないという意味には「的を射ない」という言葉が使われます。「的を射る」と同じ意味のものに「的を得る」という慣用句もありますが、これは「的を射る」の誤用だという説もあります。ですが、「的を得る」という慣用句の方を使うという人が増えてきているところから、これでも誤用ではないという認識が定着しつつあります。

気にいるは「入る」が正しい

「気にいる」はその状態の程度が非常に深いことを意味しているところから、慣用句の一種で好ましく思うことを表します。「お気に入り」などの表現もよく使われますよね。

「入る」の例文

例文1:チェロの素敵な音色に思わず聞き入ってしまった。

ここではチェロの音色を聞くという動作が非常に深くなってしまったところから、「入る」を使います。

例文2:彼女は顔を真っ赤にして、消え入りそうな声で助けを求めた。

ここでは消えるという状態が非常に深くなってしまったところから「消えいる」は「消え入る」を使います。

「要る」の例文

例文1:大学に進学するには多額のお金が要る。

ここでの「いる」はお金が必要という意味なので、「要る」を使います。

例文2:もう彼は大人なので、あれこれと口出しするのは要らぬお世話でしょう。

ここでの「いらぬお世話」は必要ない世話という意味なので、「要る」を使います。

「居る」の例文

例文1: 今日は午後3時から研究室に居ました。

ここでは午後3時からずっと現実に研究室に存在しているというところから、「居る」を使います。

例文2:息子から事故の連絡が入ったら、居ても立っても居られなくなってしまった。

ここでの「居ても立っても居られない」は心配や気になることがあって心が落ち着かず、そわそわしたり、苛々したりすることなので、落ち着いてその場に存在していられないということを意味するので、「居る」を使います。

「射る」の例文

例文1:彼女の心を射ることができるのはこの中の誰だと思いますか?

ここでの「心をいる」は心を「つかむ」ということになります。そのため、心をいるは「心を射る」を使います。

例文2:的を射た回答で、誰も批判できなくなってしまった。

ここでの「的をいた」は「要点をつかんだ」という意味になるので、「射る」を使います。

論文・小論文で「入る」「要る」「居る」「射る」を使い分ける視点

論文・小論文で「いる」を使うときは、「要る」は必要、「居る」は存在を表すことが多いでしょう。そして、「入る」を使うときは、慣用句や接尾語的に使ことが多く、その動作や状態の程度が非常に深いことを意味するときに使うと覚えておきましょう。「射る」は実際に矢で的を射るということを表現することは少ないですが、「的を射る」「心を射る」などの使い方は多く出現する可能性があります。それぞれの特徴をおさえて、色んな表現で使えるようにしておきましょう。

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