税金をおさめる 「納める」「収める」「治める」のどれが正しい?

「納める」「収める」「治める」は区別のつきにくい漢字ですが、論文・小論文ではよく使われる言葉でもあるため、それぞれどんな時に使えばいいのかしっかり理解しておきましょう。ここでは「納める」「収める」「治める」のそれぞれの意味の違いや例文について解説していきます。

「納める」「収める」「治める」の違い

納める(おさめる)
意味:渡すべき金品を受け取る側に渡す、終わりにすること。
「納める」は「納棺」など、きちんと決まったところにしまうという意味もありますが、「出納」「納税」「納入」など、お金にまつわる義務的な行為を伴うときによく使われます。そのほかに、「仕事納め」などの「物事を終わりにする」などの意味に使います。
収める(おさめる)
中に入れる、手に入れるということ。
「収める」は「納める」と類似する言葉で、同じように「箪笥に服を収める」など「きちんと入れる、決まった場所にしまう」という意味で使われます。そのほかに「成果を収める」「怒りを収める」「混乱を収める」など物以外の事柄を対象とした表現にも使います。
治める(おさめる)
世の中や家の中など、乱れた状態をしずめ秩序ある状態にする、支配すること。
「治める」は「政治」の意味からも国をおさめるときに使う言葉ですが、乱れた状態をしずめるというところから転じて、「痛みがおさまる」など「苦痛が去る」という意味でも使われます。

税金をおさめるは「納める」が正しい

「税金をおさめる」はお金にまつわる義務的な行為を伴うことなので、「納める」が正解です。

「納める」の例文

例文1:仕事が激減したので、習い事の月謝を納めるのがそろそろ辛くなってきた。

「月謝をおさめる」はお金にまつわることを指すので、「納める」を使いましょう。

例文2:予定通り注文の品を納める。

商売上の物品や縁起物などを相手に渡すときは「納める」を使いましょう。「納品」や「結納」という表現がありますよね。

「収める」の例文

例文1:3年間の思い出はすべてこのアルバムに収められている。

「思い出をおさめる」は「きちんと決まった場所にしまう」「収録する」という意味なので、「収める」を使います。

例文2:アクシデントがあったけれど、なんとか場を収めることができた。

「場をおさめる」は慣用句で、「危機や問題がある状況を何とかやり過ごす」という意味です。そのため、「混乱をおさめる」「収拾する」という意味の「収める」を使います。

「治める」の例文

例文1 国を治めるにはカリスマ性が必要になる。

「国をおさめる」は、「支配する」という意味なので「治める」を使います。「統治」「治世」と国家に関することは「治める」を使うことが多くなります。

例文2 強い痛みだったが、時間が経つにつれてそれも治まってきた。

「痛みをおさめる」は「苦痛が去る」という意味なので、「治める」を使います。

論文・小論文で「納める」「収める」「治める」を使い分ける視点

「おさめる」は混乱しやすい漢字の1つです。「怒りをおさめる」は怒りを収拾するという意味なので「収める」を使います。収拾は「混乱をおさめる」というニュアンスがあります。ですが、怒りを鎮静するという意味では「治める」という漢字を使うのが正しいということになり、どちらを使っても間違いにはなりません。同じく、「納める」と「収める」はともに「入るべきところに落ち着く」というニュアンスがあるため、「引出しにおさめる」はどちらの漢字を使っても間違いにはなりません。そのように、あいまいな部分がありながらも、論文・小論文では、「納める」は「納入する」もしくは「終わりにする」、「収める」は「しまう」「手に入れる」、「治める」は「支配する」「治す」という目星をつけた上で使い分けましょう。