「かげ」は「影」も「陰」も似たような使い方をするため、区別しにくい漢字でもあります。論文・小論文では使うことも多いので、それぞれの違いに注目しながら使えるようにしておきましょう。ここでは「影」「陰」のそれぞれの意味お違いや例文について解説していきます。
「影」と「陰」の違い
影(かげ)
意味:光に遮られてできる暗い部分
光と影というように、「影」は必ず光源があってその影響によってできる暗い部分です。もともとは月や星の光のことを「影」と言っていたのですが、それが、光が反射して水面などにうつる光を指すようになりました。「影」は具体的に見える形があるのが特徴です。対義語は「光」または「形」になります。投影・影武者など、基本的に対象物に対しての影をイメージしています。
陰(かげ)
意味:隠れて見えない、目立たないこと。
「陰」は光に当たっていない何かから隠れた暗い部分を指します。その隠れた部分は、光源の場合もあれば、風雨の場合、人目の場合もあり、「影」のように必ずしも光がなくてかまいせん。「陰口」などは人目から隠れて見えないように相手を悪く言うため「陰」を使います。対義語は「日向」、「陽」になります。
かげをひそめるは「影」が正しい
「かげをひそめる」とは、「もともと勢いがあったものがそうでなくなる」ことです。かつては繁盛したものを光に例えるなら、繁栄の欠片も感じられない「影をひそめる」は、光に対しての「影」ということで、「影」を使います。
「影」の例文
例文1:彼は影が薄いので、昨日その場に来ていたのかどうか誰も覚えていない。
「かげが薄い」とは、「姿かたちが薄く見える」ことであり、存在感がないように見えることを表しています。姿かたちがあるというところから、「影」を使います。
例文2:霧がかかった海の向こうに小さな島の影が見える。
「島のかげ」という姿かたちがあることから「影」を使います。
「陰」の例文
例文1:いつもあなたのことを陰ながら応援しています。
「かげながら」は「目立たないように」「ひっそりと」という意味なので「陰」を使います。
例文2:この子は恥ずかしがり屋でいつも知らない人に会うと両親の陰に隠れてしまう。
「かげに隠れる」は「目立たないようにする」意味なので「陰」を使います。
論文・小論文で「影」と「陰」を使い分ける視点
「影」と「陰」は読み方は同じですが、漢字によって指すものが違う言葉でもあります。「建物のかげ」に「影」を使うと建物が陽射しに当たってできた暗い部分のことを指しますが、「陰」を使うと建物の端の人目のつかないところを指します。論文・小論文ではそれぞれの指す部分を気にしながら使っていくようにしましょう。