「かいこ」には「懐古」と「回顧」の2種類の漢字があります。2つとも過去にまつわる言葉ではありますが、それぞれで使い方は違ってきます。論文・小論文を書くときには、注意して使っていきましょう。ここでは「懐古」「回顧」のそれぞれの意味の違いや例文について解説していきます。
「懐古」と「回顧」の違い
懐古(かいこ)
意味:過去を懐かしく思うこと。
過去を主観的にプラスの感情でもって思い返すようなときに使う言葉です。「懐古趣味」などと使い、古いものを好んだり、わざと昔流行ったものを今も用いたりするような「レトロ」趣味のことを言います。
回顧(かいこ)
意味:過去を振り返ること。
「回顧」は感情にとらわれず、客観的に過ぎ去った出来事をあれこれ思い返すことを言います。また、客観的に作家や画家などの生涯の作品や活動を紹介した展覧会を「回顧展」、書物を「回顧録」などとも言います。
昭和のかいこ録は回顧が正しい
「かいこ録」は、客観的に昭和の時代を振り返ってまとめた書物なので、ここでは「回顧」を使います。
「懐古」の例文
例文1:この映画は決して懐古の念や郷愁を誘うものではない。
「かいこの念」は過去を懐かしく思う気持ちのことなので、ここでは「懐古」を使います。
例文2:卒業式のシーズンは、自分が卒業した時を思い出し、懐古の情に浸ってしまう。
「かいこの情」は過去を懐かしく思う気持ちのことなので、「懐古」を使います。
「回顧」の例文
例文1:学生時代の自分をよく回顧することがある。
「学生時代をかいこする」は、過去の学生時代を振り返ることなので、ここでは「回顧」を使います。ですが、学生時代はを懐かしんで、「あの頃は良かったなあ」と思い返す意味合いで使う場合は「懐古」を使います。
例文2:デビュー50年を記念して、歌と共に歩んだ人生を回顧した展示会を開いた。
「50年をかいこした展示会」は50年の過去を振り返った展示会で「回顧展」のことなので、ここでは「回顧」を使います。
論文・小論文で「懐古」と「回顧」を使い分ける視点
「懐古」は過去をよかったなあと懐かしむことで、「回顧」は過去を客観的に振り返ることです。そこには特に懐かしむという意識はなく、時には批判的に振り返ることもあります。「かいこ」は使い方によってニュアンスが大きく違ってくる漢字でもあります。論文・小論文では、自分の意図する意味が相手に伝えられるよう適切に使えるようにしましょう。