言葉づかいがあらい 「荒い」「粗い」のどっちが正しい?

「荒い」や「粗い」という漢字は、論文・小論文でよく使われます。ですが、似たようなニュアンスを持つため、使い分けが難しい言葉でもあります。上手に使い分けられるようイメージをしながらインプットしておきましょう。ここでは、「荒い」「粗い」のそれぞれの意味の違いや例文について解説していきます。

「荒い」と「粗い」の違い

荒い(あらい)
意味:激しい動きを表します。
「波が荒い」などのように、動きが激しい様子を表しますが、そこには激しくて制御ができないというニュアンスがあります。それが転じて「荒い気性」など、乱暴で暴力的なイメージの表現にも使われます。対義語は「穏やか(おだやか)」です。また、「金づかいが荒い」など限度が超えている、「肌が荒れる」など、整っていないという意味にも使います。
粗い(あらい)
意味:すきまが大きくて細部まで整っていない、ざっくりした状態を表します。
同じ細部まで行き届いていないという意味でも、表現によって違いがあります。「粗い」でも、「粒が粗い」だと、粒の大きさがそろっていないことになり、「網の目が粗い」だと、網の目が大きいことになります。ちなみに、粒の大きさがそろっていることを、「粒ぞろい」といいます。「粒ぞろい」はいい意味のニュアンスがあり、優れた人が何人も集まった時に使います。また、「仕事が粗い」など、大ざっぱという意味もあります。これらの意味での対義語は「細かい」になります。そのほかにも、「きめが粗い」などにも使われ、肌が整っていない、きめの大きさがそろっていないところから転じて、肌の表面がざらざらしている状態を表します。そのため、こちらの意味での対義語は「滑らか(なめらか)」となります。

言葉づかいがあらいは「荒い」が正しい

「言葉づかいがあらい」は乱暴で暴力的な言葉のつかい方を指すため、「荒い」が正しくなります。乱暴な言葉とは細かい配慮に欠けた言い方をいい、具体的にはぶっきらぼうな言い方、威圧感のある言い方、下品な言い方などがあります。また、「口が悪い」という言葉がありますが、こちらも細かい配慮の欠けた言い方ではあるものの、オブラートに包まず、思ったままずけずけということを指します。

「荒い」の例文

例文1:一気に駆け上がったせいか呼吸が荒い。

呼吸の回数が激しくなるため、ここでは「荒い」になります。ちなみに、「鼻息が荒い」という言葉もありますが、こちらは意気込みが強い、強気で威勢がよい様子を表します。「今日の株式相場は荒れに荒れた」などと勝負ごとや会議、相場などに波乱が起こるときにも使います。

例文2:気性が荒い馬を人に馴らすのは一苦労だ。

ここでの「荒い」は暴力的なニュアンスが含まれます。「人づかいが荒い」「金づかいが荒い」は暴力的なニュアンスが転じて、けじめがない、度をこしている様子を表します。

例文3:荒れ果てた地を見て呆然と立ち尽くす。

ここでの「荒れる」は「荒廃する」ということです。荒廃する大地とは、食物を植えるには適さない、養分や水分のない損なわれた土地のことで、同じように「肌荒れ」などにも肌が整っていない状態、水分が損なわれてかさかさした状態のときに使います。転じて「荒れた家」「生活が荒れる」などになると、「損なわれてだめになる」というニュアンスが強くあります。

「粗い」の例文

例文1:粉のひき方が粗いと食べた時に口の中に残って食感が悪くなる。

ここでの「粗い」は「粒が大きい」ということです。「編み目の粗いセーター」となると、ここでの「粗い」は「すきまが大きい」という意味になります。

例文2 粗い手ざわりの布の方が滑らかな手触りの布よりも好みです。

ここでの「粗い」は手触りがなめらかでなく、ざらざらしているという意味です。同じざらざらしているという意味では「荒い」も「肌荒れ」など似たニュアンスがあるので気を付けましょう。ちなみに、「肌のきめがあらい」は「粗い」を使います。これは、きめの大きさが同じではないというニュアンスから「粗い」を使っています。

例文3 経費を粗く見積もりすぎて、予定よりだいぶ足が出た

ここの「粗い」は大ざっぱ、大まかということです。「粗く本読みをする」など、ざっと目を通すときにも使います。

論文・小論文で「荒い」「粗い」を使い分ける視点

「あらい」は論文・小論文の中でもよく出てくるのに区別しにくい漢字のひとつです。「荒い」は人や物の動きを表し、「粗い」は人や物の状態を表すという特徴があるので、まずはその点を抑えておきましょう。ただ、「荒れた大地」などは状態を表すのに「荒い」を使ったり、「肌荒れ」も「きめが粗い」も、同じようにざらざらしている状態なのに、漢字が違ったりと、それだけでは見分けられないものもあります。そこで、「荒い」は「穏やか」、「粗い」は「細かい」という対義語も合わせて比較してみるといいでしょう。

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