「打つ」「撃つ」「討つ」はどちらも似たようなニュアンスのある言葉です。ですが、それぞれ区別があるため、論文・小論文では誤用しないように使い分けましょう。ここでは、「打つ」「撃つ」「討つ」のそれぞれの意味の違いや例文について解説していきます。
「打つ」「撃つ」「討つ」の違い
打つ)
意味:強く当てる、たたく、ぶつ、ぶつけるということ。
「打つ」は強く当てるということですが、転じて、「太鼓を打つ」など打ち合わせて音を立てること、「蕎麦を打つ」など何かを叩いて物を作ること、「芝居を打つ」など物事を行うこと自体、「読点を打つ」など印をつけること、「リズムを打つ」など規則正しく繰り返される動き、「博打を打つ」など勝負事をすること、「早めに手を打つ」など手段・方策を施すことなど様々な表現に使われます。「打つ」ターゲットは特に決まっておらず、動作そのものを表す言葉となります。
撃つ(うつ)
意味:銃などの武器を使って射撃すること。
弾丸や矢などで目標を射ることを意味しますが、「鉄砲で撃つ」など手段として使われるニュアンスもあります。「撃つ」は「撃つべき」ターゲットがありますが、そのターゲットは必ずしも敵対するものとは限りません。
討つ(うつ)
意味:相手を攻め滅ぼすこと。
「討つ」は古風な言い回しで、時代劇などでよく使われます。「討伐」など、敵を倒す、やっつけるという意味がありますが、「討つ」は相手を倒すこと自体が目的で、動作や手段が何であるかは問題とされません。倒すべきターゲットは敵対する関係、対立する関係にあるものとなります。
銃でうって敵(かたき)をうつは「銃でうつ」は「撃つ」、「敵をうつ」は「討つ」が正しい
「銃でうつ」は銃という武器を手段にしているので「撃つ」を使います。また、「敵をうつ」は特定のターゲットであり、「倒す」というニュアンスがあるため、「討つ」を使います。
「打つ」の例文
例文1:心の平安を取り戻すため滝に打たれてきました。
「滝にうたれる」は滝に強く当たられることなので、「打つ」を使います。
例文2:心を打つ芝居が見られたので、一生の思い出になりそうです。
「心をうつ」は心に強く感動の衝撃がぶつかるというニュアンスから「打つ」を使います。
「撃つ」の例文
例文1:戦争中は敵機を撃ち落とすことばかり考えなくてはならなかった。
「敵機をうち落とす」は実際に武器を使って落とすことなので「撃つ」を使います。
例文2:警察官になった当初はなかなか当たらなかった弾も、今ではずいぶんと上手に撃つことができるようになった。
「弾をうつ」というところから、「撃つ」を使います。この場合、必ずしも敵対する相手がいるわけではありません。
「討つ」の例文
例文1:このゲームは大将を討ち取ったほうが勝ちです。
討ち取るは「勝負などで相手に勝つこと」を意味します。相手を倒すということなので、「討つ」を使います。
例文2:仇を討っても大切な人は戻ってきません。
「仇を討つ」は「仇討ち」(あだうち)とも言います。「仇討ち」は主君を殺された者がその恨みから相手に復讐をすることを言いましたが、現在は主君などに限らず、広く加害者に仕返しをすることとして使われています。「仕返しをする」=「倒す」ということで、「討つ」を使います。
論文・小論文で「打つ」「撃つ」「討つ」を使い分ける視点
論文・小論文で「うつ」を使うときには、攻撃すべき対象があるのかどうかで判断しましょう。攻撃すべき対象がある場合は「撃つ」か「討つ」、そうでなければ「打つ」になります。また、「撃つ」と「討つ」の区別として、武器などが発射するイメージのあるもの、攻撃の手段を表しているものは「撃つ」、ターゲットが対立関係にある人や団体、物体で、倒して滅ぼすイメージのあるものを「討つ」とするようにしましょう。